三浦 8月31日から9月2日まで東京ビッグサイトで開催された 「サイン&ディスプレイショウ2006」にデモ展示されたinca(SP320W)が業界を超えたさまざまな業態の方にもかなり注目されたということですが、それについてはいかがでしょうか。
前田 今回、弊社として初めてのS&Dショウへの出展ということもあり、機器を展示するだけでなく、実際に稼働させその特徴を目で見せることをテーマに取り組みました。
大きな機械なので短期間での設営や稼働は大変な作業でしたが、それを補ってあまるほどの反響をいただきました。1時間ごとのデモンストレーションのたびに多くの方がブースを訪れ興味を持って見ていただいたことで、私どもも大いに期待が膨らんでいます。
S&D業界の展示会なのでその業界の方が多いのですが、今回は特に商業印刷の関係会社が多いことに気が付きました。先ほどの話にもありましたように商業印刷市場の現状を踏まえ、新たなる業務展開を考えている企業が多いことをあらためて感じました。
incaは、その印刷サイズに加え、実際の印刷スピードに目を見張る方も多く、生産性の高さも充分アピールできたと思っています。さらに極めて高い印刷品質を実現しながら大サイズのターポリン(垂れ幕等)印刷や立体印刷など、迫力あるサンプルで効果的にアピールできました。incaとして国内初の白インクのデモンストレーションも、日本の印刷市場のニーズに応えるものでした。
三浦 inca(SP320W)は技術そのものもアピールポイントが多いのですが、それを支えているインクジェットはどう進化していくのでしょう。
前田 今後のインクジェットの方向性としては、生産性と描画品質の両立を目指し開発が進められていくと思います。現在ロールタイプが主流の中、平面素材に対しては多くの機種がロール機ベースのコンビタイプで対応しています。そのために平面素材に対しては描画精度が悪く、2度打ち・3度打ちができない機種がほとんどです。それに対しincaはフラットベッド専用、平面素材への描画精度の良さが大きな特徴となっています。また平面素材にはインクの密着性をあげるために、あらかじめ接着強化液の塗布が必要な素材があります。現在は、オフラインでその処理を行っていますが、将来的には印刷と同時にインクジェットのヘッドでできるよう改良が進められると思います。
三浦 昨今のインクジェット技術の飛躍的な進歩には、目を見張るものがあります。学生時代に目にした印刷関係の論文にインクジェットの研究に関するものが多かった記憶があります。その技術が印刷業界にどのように関わっていくのか興味深く見ていました。インクジェット技術について、今後どのような取り組みを考えていますか。
前田 最近ではUVインクジェットに対する工業用途での期待が高いことを感じています。中でも、ディスプレイ・パネル(液晶カラーフィルター)メーカー、回路基板、建装材等への採用が注目されています。特に建装材においては内装外装を問わず、高画質・高生産性・高耐久性が不可欠。家屋・ビル用はもちろんのこと、舞台・イベント装飾、建築現場で使われる現場囲いまで多種多様に及んでいます。
こうした実績は、いずれも従来はスクリーン印刷が採用されていた領域。ここにおいても、UVインクジェット導入の契機は「刷版レス・小ロット短納期対応のニーズの高まり」にあるといっても過言ではありません。
inca(SP320W)は、過去6年、スクリーン印刷によるサインディスプレイ用途のオンデマンド対応のための機器を拡販するなかで、こうしたニーズに応えられるように生産性と画質の向上をより高い次元で実らせたテクノロジーです。そして先進技術と富士フイルムセリコール社の先進UVインクとの融合が、「空間を含めた環境デザインの創造」の牽引車となってサポートしていくと確信しています。
三浦 こうした特徴的なプラス面やUVインクの優位性をS&D営業活動のアピールポイントとして考えていますが、いかがでしょうか。
前田 UVインクは溶剤インクに比べ、人にも環境にもやさしいNonVOC(非揮発性有機化合物)であることが大きなアピールポイントですね。今後の課題としては、臭気対策、刺激性改良があげられます。近い将来には印刷皮膜に柔軟性を持たせたインクがUVインクジェットのアプリケーション拡大に寄与するでしょう。さらに現行UVインクの弱点を補い飛躍的な性能向上を期待されている次世代のインクの開発が、セリコールと富士フイルムの技術とのコラボレーションによって進められています。
